安定した食糧生産と水環境保全に向けて

研究概要

研究室の使命

健全な水循環を維持し、持続的な農業生産を行うことは21世紀の大きな課題です。その実現のために、あらゆる知識と手法を援用し、開発と保全を両立させる最適なソリューションを提案します。

アジアモンスーン地域における渇水リスクハザードマップの作成を行っています。アジアモンスーン地域では、今後も人口の増加が見込まれ、その人口を支える安定した食料供給が必要となります。しかし、灌漑システムが導入された農地はわずかで、大部分は降雨依存の天水田であるため米生産は不安定となります。渇水リスクは水の需要・供給バランスによって変化するため、河川における供給可能量と灌漑に必要な需要量の時間的・空間的変動を同時に評価する必要があります。そこで、気象条件をインプットデータとして大流域の水資源量を推定する水循環モデルと作物の生長量および灌漑必要水量を計算する作物モデルを構築し、渇水の状況把握や、渇水対策を立てる上で有用な渇水リスクハザードマップの作成を行い、適応策を導入した場合のリスク軽減量を評価します。

水田水温予測モデルを用いた水管理によるイネの高温障害軽減法に関する研究を進めています。畑作物と異なり、湛水状態で栽培する水稲においては、人為的な水管理により水温をコントロールし、冷害や高温障害の影響を緩和させることが可能です。異常気象時に、農家は自衛的に水管理や栽培体系を変更しています が、早期植・深水灌漑・通水灌漑などによる水需要の時間的変動や短期的集中により、極端な場合では灌漑水の供給能力を超えてしまい、一時的な渇水状態に陥る地域が発生します。そこで、気象情報をインプットとして水田 の水温変化、稲の生長を予測するモデルを開発し、ため池の水温解析と連動して、いつ・どれくらいの灌漑を行うのが最も効果的かを導き、地域の水管理計画に役立てます。

圃場における炭素・窒素循環に関する研究を進めています。圃場における炭素・窒素の循環プロセスは土壌水分条件や温度条件により規定されます。植生の光合成による炭素固定や窒素吸収を作物生長モデルにより、土壌水分や地温条件を水・熱移動モデルにより解析し、水管理に伴う水田での脱窒量、メタン発生量や畑地における栄養塩溶脱量に関する評価を行います。

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